「ノロウイルスの原因って何?」
「流行が防げないのはどうして?」

ニュースでノロウイルスの集団感染が取り上げられる度に、疑問に感じたことはないでしょうか。この記事では、

・ノロウイルスの 5 つの感染源
・過去の集団感染の事例
・感染を防ぐ対策


…について、ご紹介します。ご自身やご家族を感染から守るために、ぜひ参考にしてください。

1.ノロウイルスの特徴

ノロウイルスは胃腸炎を引き起こす感染症です。毎年 11~2 月に流行し、社会的にも大きな問題に。その特徴は以下の通りです。

ノロウイルスとは

◆ ウイルスの性質
・腸で増殖する
・潜伏期間は半日~3 日間ほど
・症状が治った後も 2 週間ほどウイルスを排出

◆ 主な症状
・吐き気やおう吐、腹痛、下痢
・発熱や頭痛など風邪と似た症状が出ることも
・前触れなく、突然症状が現れる

◆ 治療法
・ウイルス自体に効く薬はない
・普段健康な大人であれば自然治癒する
・3 日間ほどで症状が治まる

ある調査では、「 8 人に 1 人がノロウイルスに感染した経験がある」との結果も。そのため、だれにでも感染の可能性があるといえます。

ノロウイルスの症状については、「ノロウイルスの症状|7つのセルフチェックとすばやく治すベストケア」の記事で詳しくご紹介しています。

2.ノロウイルスの原因

現代では衛生環境の改善により、昔に比べて感染病や伝染病が大幅に減りました。にもかかわらず、ノロウイルスが毎年流行するのは一体なぜなのでしょうか。

ここでは、ノロウイルスの感染源や流行の理由を、過去の実例を交えながら、ご紹介します。

2-1.原因となる 5 つの感染源

ノロウイルスの感染源は、

  • 食べ物による食中毒
  • 人から人への感染

…です。この記事では原因をさらに細分化し、5 つに分けてご説明します。

① 食品から人への感染(食中毒)

ノロウイルスによる食中毒は「もともと汚染されていた食品」または「感染者が汚染した食品」が原因です。
※ なおここでいう『汚染』とは、食品にウイルスが存在する・付着すること。

◆ 二枚貝や井戸水など、汚染された食品が原因

食べ物がすでに汚染されていた場合、ノロウイルスによる食中毒が起こります。

原因となる飲食物は、

・カキやシジミなどの二枚貝
・井戸水や簡易水道などの飲料水

…があります。特に冬場はカキ(真牡蠣)の旬の季節でもあり、多くの人が食べることがノロウイルス流行の一因と考えられています。

カキによる感染の循環
  1. ウイルスが感染者の腸内で増殖
  2. 感染者がトイレで排泄する
  3. 下水処理場を通過し、ウイルスが海に流れる
  4. 養分を得るためにカキが海水を取り込む
  5. カキの内臓がウイルスで汚染される
  6. カキを食べた人が、ウイルスに感染する

※ この一連の流れを繰り返す

◆ 調理者によって汚染された食品が原因

もう一つの食中毒は、感染者が調理する際に付着したウイルスです。これは二枚貝などに限りません。

ノロウイルスに感染した調理者が、食品を調理・加工した場合、手や指を介して食品にウイルスが付着します。

ノロウイルス,原因  不衛生な場所は要注意

特にお祭りの屋台やイベント会場など、水道設備のない場所で調理・販売された食品は危険性あり。店舗がキレイではない所での外食も要注意。

② 人から人への感染(二次感染)

ノロウイルスが人から人にうつるのは、

  • 接触
  • 飛沫
  • 塵埃(じんあい)

…の、いずれかのルートをたどります。

◆ 手に付いたウイルスが原因(接触感染)

接触感染とは、感染者の便や吐物に含まれるノロウイルスが、自分の手を介して口の中に入ることです。

特徴として、

・感染者がトイレ後の手洗いを怠ると起こりやすい
・手すりやつり革など、多くの人が触れる箇所が感染源となりやすい

…これらが挙げられます。

◆ 吐物や便から飛散するウイルスが原因(飛沫感染)

飛沫感染とは、吐物や便から飛び散ったノロウイルスを直接吸い込むことをいいます。

起こりやすいのは、

・目の前で、感染者によるおう吐や下痢が起きたとき
・吐物や便の処理中、その空気を吸い込んだとき

…といった場面です。

◆ チリやほこりになったウイルスが原因(塵埃感染)

塵埃感染(じんあいかんせん)とは、処理が不適切であった吐物や便が乾燥して舞い上がった、チリやほこりの中に含まれるノロウイルスを吸い込むことです。

具体的な状況として、

・清掃が不十分な公衆トイレ
・吐物が放置されたままの道路の端

…などの場所で起こることが想定されます。

しかし、家庭内でも汚染された衣類や布団の消毒が不十分であったことから、家族全員に感染が広がった、との事例も決して珍しくはありません。

2-2.過去に発生したノロウイルス集団感染

ノロウイルスは、個人や家庭で発生するだけでなく、時おり大規模な集団感染をみせることも。

ここでは過去に起きた、「集団感染の事例」を3つ、ご紹介します。

事例 1『学校給食から発生した食中毒』

この事例の特徴は、食中毒発生前もしくは初期における判断を誤ったという点です。

<ノロウイルス>鳥取市が初動ミス 小中校 1292 人感染
鳥取市の 17 小中学校で計 1292 人が吐き気や下痢などを訴えたノロウイルスによる集団食中毒があり、同市教委が、文部科学省が昨年 12 月に学校給食を介した集団感染防止のために出した通知文書を無視した対応を取ったために被害が拡大していたことが分かった。
毎日新聞 2007 年 2 月 8 日朝刊

17 の小中学校の給食は、市内のセンターに一括で外注されていました。

そして調理員にノロウイルス感染がみられたにもかかわらず、給食を継続したせいで感染が大幅に拡大したと指摘されています。

ノロウイルス,原因  給食センターの問題点があらわに

広域の給食施設は平常時には効率が良い反面、いったん食中毒が発生した際の対応の難しさが示された事例ともいえる。

事例 2『ホテルで発生した大規模感染』

この事例の特徴は、汚物が乾燥した後も感染力を秘めていたという点です。

Mホテルにおけるノロウイルスによる集団胃腸炎の発生について
嘔吐物の処理は洗剤で清掃し、ノロウイルスの消毒に関しては不十分であった。このため、かなりのノロウイルスが絨毯に付着し、乾燥して、その絨毯の上を多くの人が歩くことにより、また絨毯を掃除機で掃除したことなどから、空中にノロウイルスが飛散し、経口感染につながった可能性があること。

このように利用客がホテルの床におう吐した後、カーペットの消毒がしっかりと行われなかったことが要因。

その結果、436 名もの感染者が出てしまったと指摘されています。

ノロウイルス,原因  見た目にはわからない汚染

宿泊施設であるため、汚物の清掃は速やかに行われたが『残留物が乾燥後、ウイルス粒子となって空気中に拡散』という危険性は見過ごされていたと推測される。

事例 3『クルーズ船での感染蔓延』

この事例の特徴は、特殊な環境下での感染拡大を防ぎきれなかったという点です。

豪華客船でノロウイルス感染か、650 人近くに症状
カリブ海を周航中に乗客と乗務員が下痢や嘔吐(おうと)などの症状を訴えた豪華客船「エクスプローラー・オブ・ザ・シーズ」は、予定を 2 日繰り上げて 29 日に帰港する。患者の数は27 日までに 600 人を超えた。
米疾病対策センター(CDC)によると、患者は乗客 3050 人のうち 595 人、乗務員 1165 人のうち 50 人に上った。

クルーズ船での航海では、海の上という逃げ場のない環境に置かれます。

その上、食事などで大人数が同じ空間に集まる機会が多く、特に感染が広がりやすい状況だったのではないでしょうか。

ノロウイルス,原因  注意喚起がなされるまでのタイムラグ

客船では食中毒が発生しても乗客に伝えられるまでに数日かかることも。そのため感染者の自覚も薄く、予防意識が希薄だったと推測される。

2-3.ノロウイルスが流行する理由

大規模な集団感染は、自分には関係のない遠い話のように感じるかもしれません。しかしノロウイルスは毎年、全国の至る所で発生しているのが現実。

このように流行が繰り返される理由を、専門家は以下のように記述しています。

ノロウイルス,原因

ノロウイルスによる食中毒はなぜ無くならないのか
膨大な感染者から想像を絶する大量のノロウイルスが環境中に排出され続けている。それらは容易に不活化されず、感染力を維持し、常に生き残るためにヒトの口腔内への侵入を狙っている。ノロウイルス食中毒はノロウイルス感染者によって起こされるので、常に発生している多数の感染者を皆無にすることは至難の業である。

(一財)食品分析開発センターSUNATEC 2012年10月配信メールマガジン 愛知医科大学医学部 公衆衛生講座 西尾治

つまり、細菌性食中毒は食品の鮮度や取り扱いの注意によって防げますが、ノロウイルスは人から人にも感染するため、どこで感染するかわからないためです。

3.ノロウイルスの感染を防ぐために

では実際に、ノロウイルスの感染を防ぐために何ができるのでしょうか。

  • 日常的に行う予防法
  • 緊急時の対策

…に分けて、ご紹介します。

ノロウイルスの予防については、「ノロウイルスの予防法|感染を防ぐ4つのルールと発症しない体づくり」の記事にも、詳しく掲載しています。

◆​ 日常における注意点

まずは普段からできる、ノロウイルス対策をご紹介します。

日常での予防ポイント

◆ 調理時に食品を汚染しないために
・食品の中心部までしっかりと加熱
・調理器具やまな板などの洗浄・消毒を徹底

◆ 外食時にウイルス感染しないために
・信頼のできるキレイなお店を選ぶ
・食事前に石けんで手を洗う
・カキなどの二枚貝の生食は避ける

◆ 人から感染しないために
・こまめに手洗いを行う
・マスクを着用する

手洗いについては、石けんを使って 30 秒以上かけて行うと効果的。洗い終わったら共用のタオルではなく、ペーパータオルでしっかりと水分を拭き取ることも大切です。

◆ 緊急時の注意点

最後に、家庭や学校、勤務先で感染者が出た場合など、緊急時における対策をご紹介します。

緊急時の予防ポイント

◆ 周囲でおう吐があった場合
・まずは一度、速やかに遠ざかる
・自分が介抱する際はガウンやマスク、手袋を着用する

◆ 自分が汚物処理をする場合
・汚物はビニール袋に密封して処分
・カーテンやじゅうたんは、キッチンハイター(花王)などの塩素系漂白剤で消毒

◆ 自分に感染の疑いがある場合
・ウイルスを吸い込んだおそれがあるときは、すぐにうがいと手洗いを行う
・体調に異変があるときは食事を控え、体を温めて安静に過ごす

4.まとめ

ノロウイルスの原因についてまとめました。

感染源
  • 二枚貝や井戸水など、汚染された食品
  • 調理者によって汚染された食品
  • 手に付いたウイルス
  • 吐物や便から飛散したウイルス
  • チリやほこりの中のウイルス

予防ポイント
  • しっかりと加熱調理された食べ物を選ぶ
  • 手洗いやうがいなど衛生面の徹底
  • 塩素系漂白剤を用いた消毒や汚物処理

ノロウイルスに感染してしまうかどうかは、予防に向けた意識だけでなく、体力や免疫力も大きく影響しています。

ご紹介した衛生面での対策に加え、規則正しい生活やバランスの取れた食生活を心がけましょう。

◆ 参考文献