「インフルエンザの予防接種を受けたのに、感染してしまった」

…なんていう経験がある方は、少なくないのではないでしょうか?

せっかく予防接種を受けたのに感染してしまうと、『効果はなかったの?』と疑ってしまいます。

この記事では、予防接種に使われるワクチン(注射する薬液)を取り上げ、

  • インフルエンザの予防接種の効果
  • インフルエンザワクチンのメリットとデメリット

…について、最新の情報を交えながらご紹介します。自身やご家族が接種する際の参考にしてみてください。

予防接種を受ける際の注意点などについては「インフルエンザの予防接種|6つの疑問と接種後の注意点を全解説」の記事で詳しくご紹介しています。こちらも参考にしてみてください。

1.インフルエンザワクチンとは

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することで起こり、38 ℃以上の高熱などの重い症状が現れるのが特徴です。

このようにウイルスや細菌などが原因となる病気を「感染症」といい、事前にワクチンを打つことで、ある程度防ぐことができます

1-1.ワクチンが効く仕組み

私たちの体には、ウイルスや細菌を異物(敵)と認識し、対抗する仕組みがあります。

これを免疫機能といい、ワクチンの働きにも深く関係しています。

ワクチンで免疫ができる仕組み
  1. ワクチンを打つ
  2. 体がワクチンの成分を異物として認識すると、免疫機能として働く「抗体」という物質が作られる
  3. 同じウイルスが体内に侵入したときに、抗体がウイルスを倒す

このようなワクチンの働きによって、感染症の発症や重症化を防ぐことができるのです。

1-2.ワクチンの種類と効果が続く期間

◆ ワクチンの種類

ワクチンとは、予防接種の際に注射する薬液のことです。通常、病気の原因となるウイルスや細菌をもとに作られ、大きく 2 つに分けられます。

ワクチンの 2 つの種類

・生ワクチン
…ウイルスや細菌の病原性を弱めたもの。
例)はしか、風しん、みずぼうそうなどのワクチン。

・不活化ワクチン
…ワクチンから病原性を無くし、免疫を作るのに必要な成分だけを取り出したもの。
例)インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン。

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンなので、生ワクチンよりも体への負担が少ないとされています

◆ ワクチンの効果が続く期間

インフルエンザワクチンの効果は、接種後約 2 週間で出始め、約 5 か月間持続します

そのため接種は 1 シーズンに一度、インフルエンザの流行が始まる 12 月までに済ませておくと安心です。

インフルエンザ,ワクチン  予防接種の費用は 3,000~5,000 円

病院によって異なるが、平均して 3,000~5,000 円ほど。ただし「定期接種の対象者」は一部公費負担で受けられる。
※ 定期接種の対象者については、「インフルエンザの予防接種|6つの疑問と接種後の注意点を全解説」の記事を参照。

2.ワクチンについての正しい情報

インフルエンザワクチンには一定の予防効果がありますが、デメリットに関する情報もあります。

ここからは、

  • 発症や重症化を防ぐ効果
  • 考えられるデメリット

…について、お伝えします。

公表されている数字や厚生労働省の見解を中心に取り上げますので、接種を考える際に、判断材料の一つとしてください。

2-1.発症や重症化を防ぐ効果

インフルエンザワクチンには、発症そのものをある程度防ぐ効果があります。ただそれ以上に、かかった際の重症化を防ぐ効果が高いのが特徴です。

厚生労働省も以下のように回答しています。

インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありませんが、ある程度の発病を阻止する効果があり、また、たとえかかっても症状が重くなることを阻止する効果があります。

それぞれの予防率を見てみましょう。

発症予防率
  • 成人( 64 歳未満)  70~90 %
  • 高齢者( 65 歳以上) 30~40 %
  • 子ども( 6 歳未満)   20~30 %


    重症化予防率
  • 肺炎・入院を防ぐ 30~70 %
  • 死亡を防ぐ       80 %

※ いずれも 65 歳以上の高齢者の調査結果

成人の場合はワクチンである程度、発症を予防できることが分かります。

また 60 歳以上は、ほかの年代に比べて重症化しやすく入院となるケースが多いため、ワクチンの必要性は高いといえるでしょう

インフルエンザ,ワクチン  より効果を高めるには「 2 回接種」を

1 回の接種より 2 回接種のほうが予防効果が高いため、インフルエンザに対する免疫の弱い 13 歳未満では 2 回接種が推奨されている。また、医師によっては 65 歳以上も同様の理由で 2 回の接種を勧める場合もある。

【 接種回数 】
・生後 6 か月~13 歳未満… 2 回
・13 歳以上… 1 回

2-2.考えられるデメリット

インフルエンザワクチンのデメリットとして、

  1. インフルエンザワクチンの副反応
  2. 含まれる成分の安全性

…主に、これら 2 点が指摘されています。

① インフルエンザワクチンの副反応

インフルエンザのワクチンを接種することで、免疫がつく以外の反応が現れることがあります。これを「副反応(副作用)」といいます。

一般的に副反応は、軽度な症状です。

軽度な副反応

◆ 部分的な症状
…注射部位の赤み、腫れ、痛み
…接種を受けた人の 10~20 %に出るが、2~3 日でなくなる

◆ 全身症状 
…発熱、頭痛、寒気(悪寒)、倦怠感
…接種を受けた人の 5~10 %に出るが、2~3 日でなくなる

また非常にまれですが、以下のように重篤な症状が報告されています。

重篤な副反応

・ショック
・アナフィラキシー様症状
・ギランバレー症候群
・急性脳症、急性散存性脳脊髄炎
・けいれん
・肝機能障害
・ぜんそく発作
・血小板減少性紫斑病

そのため、ワクチンの危険性を指摘する意見もあります。

なお厚生労働省では、報告のあった重症例について以下の発表をしています。

報告された副反応の原因がワクチン接種かどうかは、必ずしも明らかではありません。インフルエンザワクチンの接種後に見られた副反応については、順次評価を行い、公表していきます。

このようにワクチンと重篤な副反応の関係は明確ではなく、持病や体調などが影響している可能性も考えられるようです。

② 含まれる成分の安全性

インフルエンザワクチンには製造過程で使用される、

  • 鶏卵の成分
  • チメロサール

…といった成分が含まれています。

これらの成分がアレルギー症状や健康被害を引き起こすおそれがあるとされ、以前は問題視されていました。ただ現在のワクチンは精製度が高く、ごく微量しか含まれないため、安全性が認められています

鶏卵成分については、重度の卵アレルギーでない限り接種することができます。ただし接種前に医師にアレルギーであることを伝え、慎重に接種してください。

インフルエンザ,ワクチン  ゼラチンは含まれない

以前のワクチンには安定剤として添加されていたが、アレルギーの症例が出たことから改良され、現在国内で製造されているものには含まれていない。

2-3.接種に注意が必要な人

接種当日に以下の状態にある方は、副反応などワクチンによるデメリットのほうが大きいと考えられるため、接種できない可能性があります

ご自身やご家族が該当していないか、確認してみてください。

接種に注意が必要な人(医師と要相談)
  • 特定の基礎疾患がある人
  • 過去にけいれんを起こしたことがある人
  • 呼吸器疾患を患っている人
  • 過去に免疫不全の診断を受けた、または近親者に免疫不全の方がいる人
  • 過去に接種後 2 日以内に発熱または全身の発疹など、アレルギーを疑う症状が出た人
  • 鶏卵、鶏肉、チメロサール(水銀系保存剤)にアレルギーを起こすおそれがある人

接種を受けることができない人

  • 明らかな発熱がある人
  • 接種時点で重篤な病気を患っている人
  • 過去にアナフィラキシーを起こしたことがある人
  • その他、医師が不適当な状態と判断した場合

厚生労働省 HP「インフルエンザ Q&A」アステラス製薬株式会社 HP「インフルエンザ〈なるほど病気ガイド〉」より編集部作成)

3.今季(2016/2017 年)のインフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンはその年に流行するウイルスを予測して作られます。毎年の接種が推奨されているのはこのためです。

昨シーズンは製造されていたチメロサールフリー(有機水銀を含まない)ワクチンは、製造中止になりました。

今季のインフルエンザワクチンには、インフルエンザA型に対応する 2 種、B型に対応する 2 種の、計 4 種が含まれています。

今シーズンのインフルエンザワクチン

・香港型とよばれるA型(H3N2)

・2009 年に流行したA型(H1N1)
※ 当時、新型インフルエンザに指定された種類

・山形系統とよばれるB型
 
・ビクトリア系統とよばれるB型

B型インフルエンザは 2 種類しかないため、すべてが含まれていることになります。

また今シーズンは、香港型とよばれるA型(H3N2)が最も流行しており患者数が多いため、ワクチンによる予防が期待できるといえるでしょう

4.まとめ

インフルエンザワクチンについて、最新情報を交えながらご紹介しました。

メリット
  • 病原性をなくしたウイルスを原料とするため体への負担が少ない
  • 入院するほどの重症化を予防する効果が高い
  • 成人では発症予防効果が高い( 70~90 %)

デメリット
  • 子どもや高齢者では発症予防効果が低い(2回接種することで効果は高くなる)
  • 接種した人の 5~20 %に軽度な副作用が現れる
  • 卵成分が含まれる(重度の卵アレルギーがあると接種できない)

ほかにも気になることがあれば、お近くのクリニックに直接質問してみるとよいでしょう。

疑問や不安をしっかりと解消したうえで、予防接種を検討してください。

◆ 参考文献