病院でインフルエンザと診断されたときに処方される、抗インフルエンザ薬。

小さなお子さんがインフルエンザにかかると、

「異常行動が起こるって本当?」
「早く治したいけど、副作用は大丈夫?」

…と、心配になるお母さんも多いのではないでしょうか。

ここでは、

  • 抗インフルエンザ薬の効果
  • 抗インフルエンザ薬の種類と特徴
  • 抗インフルエンザ薬使用時の注意点

…などについて、ご紹介します。

安心して看病に専念できるよう、ぜひ参考にしてください。

1. インフルエンザの薬

まずは、インフルエンザの症状と、病院で処方される薬についてご紹介します。

1-1.インフルエンザとは

インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因となる感染症です。

38 ℃以上の高熱や体の痛み、咳などの症状が急激に現れ、完治まで 7~10 日間かかります。

風邪もウイルスによる感染症ですが、インフルエンザは症状が重く回復に時間がかかるため、特別な治療薬があります

1-2.インフルエンザで処方される薬

インフルエンザは、体内のウイルスが減少することで回復に向かいます。

そのためインフルエンザと診断されると、ウイルスの減少をサポートするために、次のような薬が処方されます。

インフルエンザで処方される薬

【ウイルスの増殖を抑える薬】
…ウイルスに直接作用する治療薬、抗インフルエンザ薬のこと

【症状を一時的に和らげる薬】
…解熱剤、鎮痛剤、痰を出しやすくする薬 など

【細菌感染を防ぐ薬】
…細菌感染の併発やそのリスクが高い場合に処方される

今回、詳しくご紹介するのが「抗インフルエンザ薬」です。

ほかの薬は症状の軽減や合併症に対するものですが、抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスに直接作用する治療薬です

インフルエンザ,薬  抗インフルエンザ薬の登場は約20年前

1998 年に A 型のみに有効なアマンタジンという抗インフルエンザ薬が登場。その後、2001 年に新たに 2 種類が保険適応となった。それまでインフルエンザの治療は、解熱剤など症状を一時的に緩和させる治療薬のみで対処していた。
※ アマンタジンは、薬が効かないウイルスが出た(耐性化)ことから、現在はほとんど使われていない。

2. 抗インフルエンザ薬とは

ここからは、インフルエンザの治療薬である抗インフルエンザ薬の働きや、薬の種類ごとの特徴をご紹介します。

2-1.抗インフルエンザ薬の特徴と種類

抗インフルエンザ薬は、ウイルスの増殖を抑える働きがある治療薬です。使用しない場合と比べて、回復までの期間を 1~2 日短縮する効果が期待ができます

主に現在、使われている抗インフルエンザ薬は、

  • タミフル
  • リレンザ
  • イナビル
  • ラピアクタ

…の 4 種類があります。それぞれの特徴や適応年齢、価格などを順に、ご紹介します。

◆ タミフル

カプセルタイプの内服薬です。小児用に水で溶かして飲むドライシロップもあります。

抗インフルエンザ薬には吸入タイプの薬もありますが、タミフルはそれらの吸入薬を使うのが難しい、

  • 4 歳以下の子ども
  • 高齢者

…といった方に適しています。

また因果関係は明らかになっていませんが、服用した後に異常行動を示す例があったため、10 代への処方は控えることになっています。

服用回数

1 日 2 回、5 日間服用する

価格

・カプセル…3 割負担で 849 円
・ドライシロップ…3 割負担で 732 円

服用に注意が必要な人
  • 1 歳未満の低出生体重児、新生児、乳児
  • 腎機能に重い障害のある人
  • 妊娠中の人
  • 授乳中に服用する場合は、授乳を避けること(母乳に移行するため)
     
副作用

発疹、じんましん、消化器症状、口内炎、便の異常、胸痛、むくみ など
※ いずれも発現率は 0.1 %程度

◆ リレンザ

容器に入った粉末状の薬剤を吸入するタイプの薬です。

正しく吸えないと薬の効果が低くなるため、目安として 5 歳以上の使用が勧められます。タミフルが処方できない 10 代に使われることが多いです。

タミフルとは異なり、体に作用するのに血液中を通らないため全身への影響が少ないのが特徴。

使用量

1 回に 2 容器を 1 日 2 回、5 日間吸入

価格

3 割負担で 912 円

使用に注意が必要な人
  • 65 歳以上の人
  • 心臓に持病がある人
  • 糖尿病など代謝性の病気がある人
  • 腎機能に障害がある人
  • 乳製品に対して過敏症がある人
  • 低出生体重児、新生児、乳児または 4 歳以下の幼児
  • 妊娠中の人
  • 授乳中に使用する場合は、授乳を避けること(母乳に移行するため)
     
副作用

発疹、じんましん、頭痛、消化器症状、口内炎、動悸、発汗 など
※ いずれも発現率は 0.1 %程度

◆ イナビル

2010 年に登場した薬で、リレンザと同様、吸入するタイプの薬です。最大の特徴は 1 回のみの使用で完結すること。

そのため飲み忘れの心配がなく、忙しい社会人や主婦の方などに向いています。きちんと吸入できないと効果がないため、4 歳以下や高齢者には適していません。

またタミフルやリレンザに比べて、細胞内に長くとどまり効果を発揮します。効きにくいウイルスが出にくく、重大な副作用も報告されていません。

使用量

10 歳未満は 1 容器、10 歳以上は 2 容器を 1 回吸引する

価格

3 割負担で 1,283 円 ※ 10 歳未満は 641 円

使用に注意が必要な人
  • 65 歳以上の人
  • 呼吸器や心臓に持病のある人
  • 糖尿病など代謝性の病気がある人
  • 腎機能に障害がある人
  • 乳製品に対して過敏症がある人
  • 妊娠中の人
  • 授乳中に使用する場合は、授乳を避けること(母乳に移行するため)
  • 低出生体重児、新生児、乳児
  • 幼児の場合は吸入時、要観察
     
副作用

じんましん、発疹、下痢や胃腸炎などの消化器症状、口内炎、めまい、頭痛 など 
※ いずれも発現率は 0.1 %程度

◆ ラピアクタ

抗インフルエンザ薬のなかで唯一の、点滴注射薬です。内服や吸入が困難な重症・入院患者に適しており、0 歳から使用できます。

基本的には 1 回の点滴で投与が終わりますが、それで効果がなければ複数回の点滴もできます(保険適応)。

投与量

300 mgを 15 分以上かけて投与する

価格

3 割負担で 1,864 円

投与に注意が必要な人
  • 腎機能に障害のある人
  • 心臓や循環器系の機能に問題がある人
  • 妊娠中の人
  • 授乳中に投与する場合は、授乳を避けること(母乳に移行するため)
  • 低出生体重児、新生児、乳児
     
副作用

発疹、じんましん、消化器症状、めまい など
※ いずれも発現率は 0.1 %程度

ここまで 4 種類の抗インフルエンザ薬についてご紹介してきました。

これらの中から、診察した医師が適切な種類の薬を選び、処方します。ただし病院によっては、患者さんが希望する種類を選ぶことができるところもあるようです。

インフルエンザ,薬  新しい抗インフルエンザ薬「アビガン」

2014 年に承認されたもので、体内のウイルスの増殖を防ぐことができる薬。発症から時間が経ってから服用しても効果が期待できるのが特徴。

ただしアビガンが使用されるのは、「過去にパンデミックを起こしたウイルスが再流行したとき」「新型インフルエンザウイルスが流行したとき」など、従来の抗インフルエンザ薬では対応できないケースに限られている。

2-2.副作用と異常行動について

ご紹介したように、抗インフルエンザ薬の副作用はいずれも、発現率が 0.1 %程度か頻度が不明なもので、起こり得るのは非常に稀。

また特に、若年者の服用で問題になっている転落などにつながる異常行動については、薬との因果関係は明らかにされておらず、インフルエンザそのものによる可能性も指摘されています

2-3. 抗インフルエンザ薬の予防投与

家族など近くに感染者が出たとき、予防目的で抗インフルエンザ薬を用いることができます。

予防投与ができるのは、タミフルとリレンザの 2 種類のみです。

特に以下に当てはまる方は、インフルエンザにかかると重症化しやすいので、周囲に感染者が出た場合は予防投与が推奨されています。

予防投与の対象者
  • 高齢者(65 歳以上)
  • 慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者
  • 代謝性疾患患者(糖尿病など)
  • 腎機能障害患者

ただし予防投与はあくまでも予防が目的であり、治療ではないので全額自費負担となります。また使用量や回数が治療時とは異なるため、医師の指示に従いましょう。

3. 抗インフルエンザ薬使用時の注意点

ここからは、抗インフルエンザ薬を使用するときに注意すべきことをご紹介します。副作用などのリスク対策としても、次の点を意識しましょう。

抗インフルエンザ薬の注意点

・市販薬との飲み合わせ
…病院でもらった処方薬どうしは併用可能
…市販薬は併用しないほうが良い場合もあるため、必ず薬剤師に相談すること

・子どもの服用
…できれば回復するまで一人にせず、大人が付き添うこと
…特に服用後 2 日間は合併症などが出やすいため注意が必要

複数回の使用が必要な薬は、症状が落ち着いてきても必ず、最後まで飲み切ってください。途中で断薬すると、十分に回復せず症状が長引くおそれがあります。

インフルエンザで飲む解熱剤については、「インフルエンザの解熱剤|間違いない選び方とOK&NGな市販薬一覧」の記事で詳しくご紹介しています。こちらもぜひ、ご覧ください。

4. まとめ

インフルエンザと診断されたときに処方される治療薬「抗インフルエンザ薬」について、まとめました。

抗インフルエンザ薬の働き

…インフルエンザウイルスの増殖を抑えることで、回復を 1~2 日短縮する効果が期待できる

抗インフルエンザ薬の種類と特徴

◆ タミフル
…内服薬
…1 日 2 回、5 日間服用
…4 歳以下や高齢者など吸入薬が向かない人に適している

◆ リレンザ
…吸入薬
…1 日 2 回、5 日間吸入
…10 代で使われることが多い

◆ イナビル
…吸入薬
…1 回のみ吸入
…複数回の使用が向かない人に適している

◆ ラピアクタ
…点滴注射薬
…15 分以上かけて 1 回投与
…内服薬や吸入薬の使用が難しい人に適している

現在はこのように、複数の抗インフルエンザ薬があります。

薬の効果や注意点を知ったうえで使用することで、より早い回復につながるはずです。

◆ 参考文献

  • 河合直樹編著:よくわかるインフルエンザのすべて,医薬ジャーナル社,2013.
  • 泉 孝英,長井苑子編:医療者のためのインフルエンザの知識,医学書院,2005.
  • 厚生労働省HP「インフルエンザQ&A」